読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

金を持っても本を読んでも心は貧しい。

悲しみの記憶について。人生で最初の「悲しい」の記憶を探していて思い出しました。

祖母に連れられ、いとこのバレエの発表会へ出かけた時のこと。発表会へと向かう途中、わたしたちは花屋に寄った。いとこに渡すための花束を買うために。祖母はわたしに「あなたの分も買ってあげるわ」と言った。それはわたしからいとこへ渡すための花束を指していたんだけど、わたしはすっかり「わたしへの花束」だと思い込んでしまった。そんなはずなくておかしな話なんだけど。黄色の小さなバラの花束。

発表会を終えたいとこを前に、祖母から「ほら、渡してあげて」と言われた時の、あの気持ち。少しの疑いもなく自分のものだと思っていて、ずっと大事に持っていて、この手から離れることなんてないと思っていたものを、あっけなく取りあげられた瞬間のあの気持ち。なんてことないあの気持ち。